ラベル の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2018年5月7日月曜日

欧文電算写植の思い出

若い頃、会社で電話に出たら、「いる?」って言うので「いらない」って切ったことが。
 
                  

その、従業員10人にも満たない小っちゃな会社でやっていた欧文電植(電算写真植字)の仕事は、その後に普及したDTPとは異なり、相当に専門的な知識と技術を要するもので、当然顧客もその分野に詳しい人たちばかり。ときどき必要に迫られた素人の客からも依頼はありましたけど、大抵は自分が素人だという自覚がちゃんとあり、遠慮がちに初歩的な質問をしてきます。こちらもそういう相手には丁寧に説明した上で仕事を受けるので、常連客よりよほど感謝してくれたものです。

ところが、いつでもどこでもトンチンカンに威張ったバカってのはいるもので、一度こんなことがあったんです。普段は和文しか扱っていないどっかの印刷会社の営業ってのが突然うちの会社を訪ねて来て、欧文の組版作法を一切無視した、殆ど物理的に無理な注文を押し通そうとする。いくら説明してやっても理解せず、挙句の果てに「客の言うことが聞けんのか」などとほざきやがる。手の施しようがありません。だから遠慮なく概ね次のように言ってやりました。

2018年5月6日日曜日

ハンター・デイビズの『ザ・ビートルズ』

ちょうど40年前の1978年、ロンドンの英語学校とは通りを挟んだ向いにあった本屋で偶然見つけ、迷わず買った ‘The Beatles’ っていう本がまた読みたくなり、部屋中を探してやっと見つけました。

そのさらに10年前の初版を改訂したというペーパーバックで、既にボロボロ、ページも相当に黄ばんでおりますが、それでも活字の使いようは今どきよりよほど正統的。たとえば ‘ff’ ‘fi’ ‘fl’ ‘ffi’ ‘ffl’ など、今じゃあウェブ上の表示と同様、全部1字ずつ並べるだけの本が普通になっててガッカリすることが多い中、全部 ‘ligature’、「合字」ってやつんなってんです。つまり2字あるいは3字が合わさって1つの活字になってるって寸法。

何のことかわかんないとしても、それは本場の欧米でも同じこと。堅気の衆なら日本人と変らんでしょうし、いったいそれに何の意味があるんだ、と思われるのもごく正常な反応ではあります。でもね、たとえば ‘f’ という活字と ‘i’ という別の活字を並べると、前者の右上に垂れ下がった丸い点(や横棒)と、後者のそれ(中学の英語教師は「アイ上の点を忘れるな」などと言ってやがったな)も当然並ぶことになり、しかも極めて近接、というよりくっついちゃったりして、甚だ見苦しい……なんて思うところからして一種の職業病の如きものなんでしょうけれど、作法どおりその合字を使うと、点は両方を兼ねた1つだけとなり、実にスッキリするってわけです。