その、従業員10人にも満たない小っちゃな会社でやっていた欧文電植(電算写真植字)の仕事は、その後に普及したDTPとは異なり、相当に専門的な知識と技術を要するもので、当然顧客もその分野に詳しい人たちばかり。ときどき必要に迫られた素人の客からも依頼はありましたけど、大抵は自分が素人だという自覚がちゃんとあり、遠慮がちに初歩的な質問をしてきます。こちらもそういう相手には丁寧に説明した上で仕事を受けるので、常連客よりよほど感謝してくれたものです。
ところが、いつでもどこでもトンチンカンに威張ったバカってのはいるもので、一度こんなことがあったんです。普段は和文しか扱っていないどっかの印刷会社の営業ってのが突然うちの会社を訪ねて来て、欧文の組版作法を一切無視した、殆ど物理的に無理な注文を押し通そうとする。いくら説明してやっても理解せず、挙句の果てに「客の言うことが聞けんのか」などとほざきやがる。手の施しようがありません。だから遠慮なく概ね次のように言ってやりました。