2018年1月17日水曜日

兜を猪首に……?

2006年に解雇された、地元文京区本郷の印刷会社で、2002年に組版(くみはん)をやらされた『よみがえる幕末・明治 大君の使節たち』(「大君」には「たいくん」とのルビあり)という写真集にまつわる、懐かしくもバカバカしいお話でございます。日本カメラ博物館とやらが、結構な値段で来館者に売りつけるみやげものだったんですが、文章部分に明らかな誤りが目立つので、何の義理もないのにしかたなくいくつか指摘してやったところ、一切無視してそのまま発行。ハァ……。

たとえばこのこの写真:



能書きには〈兜を猪首(太い首)にかけて馬に乗り、皇帝ナポレオン3世に謁見したところ、皇帝は大満足されたという〉とあります。宛然フランス皇帝はこの御仁の太い首に満足したかのよう。

まあ太い首愛好家ってのもいないとは限らないでしょうけれど、この人特に首が太いわけじゃありませんよね。むしろ、甲冑を着けていてさえ首筋は比較的スッキリ伸びているように見えます。とても猪首(太いだけではなく短い首ってことで)とは言えんでしょう。

「兜を猪首にかぶる」という表現ならありますが、自らの勇猛ぶりを誇示するため、わざと兜を阿弥陀にかぶって顔面を無防備にして見せることだとか。そうすることにより、兜後部の「錣(しころ)」が垂直に垂れ、宛も猪のように首の後ろと背中がなだらかに繋がって見えるという寸法。あるいは、首を囲む形になる錣が首と一体を成し、つまりは首自体が太くなったかのような錯覚を生ずるから、とのことです。

もちろんこの人物はそんなかぶり方をしているわけでもありません。つまりどうしたって猪首という言葉は場違い。どこかで聞きかじったか読みかじったかしたカラ知識をひけらかそうとして、そもそも意味がわかってなかった、ってことなんじゃないかと。

妙な文言はこれだけではなく、その下の段落にもかなりありますが、とにかくこの写真集、まだまだトンチンカンな記述に溢れておりますれば、追ってそれもお伝え致す所存。まずはこれにて。

1 件のコメント:

  1. 幕末、明治の古写真は非常に重要です。日本の伝統を知らない学者が沢山いるので困りものです。剣道柔道なんて言葉もそのもの自体も江戸時代にはありません。剣道柔道なんて標準語みたいなものです。保守右翼系の人達も左翼系の人達も、伝統を理解していません。軟式テニスみたいな剣道、レスリングみたいな柔道、キックボクシングみたいな空手!このことを正しい武道とかいう宗教的言い回しでごまかしています。学者や学芸員がこのことを理解してくれません。なんとかしてはっきりさせ、世の中をひっくり返しましょう

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