シネイド・オコナー(Sinéad O'Connor)という人を知ったのは、既に30年近く前、 ‘Nothing Compares 2 U’ って曲によってでした。作者はプリンスで、もともとはその数年前に他者へ提供した曲だった……とは、当時はまったく知りませず。
この題名の洒落た表記法、つまり ‘to you’ の代りに ‘2 U’ と書くのが流行り出すのはEメールが普及してからで、プリンスは随分と早くそれを先取りしていたことになります。検索したところ、この曲の初出は1985年、 the Family のアルバムに収録されていた由。オコナーのヒットは90年で、プリンス自身がライブ音源を出したのはそのさらに暫く後だったのだとか。ふ~ん。
ところで、 ‘to compare’ という動詞とともに用いられる前置詞は ‘with’ が基本だったのが、いつの間にか、特に米国においては ‘to’ のほうが優勢となってたんですね。かつては、 ‘to compare A with B’ だと主に「AをBと(AとBを)比較する」、 ‘to compare A to B' なら「AをBに例える」というふうに大概分れていたのが、今は区別がなく、アメリカではいずれも圧倒的に ‘to’ が多い模様。ウェブ上の記事からもそれは明らかなんですが、いつからそうなったのだろうと思って、Google の Ngram Viewer ってのを覗いてみたら、どうも60年代以降のようでした。
英国では未だに ‘with’ も普通だと思われますが、他の事例と同様、いずれはアメリカ式に移行するのかも知れません。件の ‘Nothing Compares 2 U’ の場合は、「~に匹敵する、比肩する」という意味の自動詞(前置詞込みで他動詞扱いも)で、最初聞いたときは「あれ? それって ‘with’ じゃなくて ‘to’ なの?」って思ったものです。ビートルズ(ジョン・レノン)の ‘In My Life’ では、 ‘There is no one compares “with” you’ となっており、それはイギリスだからなのか60年代だからなのか……。
因みにこの歌詞、中学の頃は構文が謎で、 ‘compares’ の前に ‘who’ とか ‘that’ とか、とにかく主格の関係詞がないとダメなんじゃないの?って思ってたんですが、実は慣用的に確立あるいは容認された表現で、本来は2つなければならない筈の語を1つだけで済まそうという横着な言い方。 ‘apo koinou’(アポー・コイヌ―)というギリシャ語源の文法用語もあるものの(‘in common’ =「共有」というのが原義だそうで)、それ、現代では主に修辞法の用語となっており、文法では、破格構文の一種として、単に ‘blend’ と呼ばれることが多い、とのことです。
すみません、またどうでもいいことを。
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