2018年2月18日日曜日

ついでの言いがかり

さらに「ハッカー考」からの余談(愚痴)を。これで終りにするつもりです。以下、早速その拙文からの引用ということで。

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そう言えば、ずっと前のことですが、「ラーメンをソバと言うな。ソバは蕎麦粉に決ってる」と毒づいてた野郎を見たことがあります。これも言葉の多層性という、普通に暮らしていれば子供にだって了知し得る昭然たる事象を解さざる愚蒙のともがら。

ラーメン(老麺? 拉麺?)を「中華そば」とも呼ぶのは周知の事実だし、それどころかかつては「支那そば」って言うのが普通だったのを知らんのかね(PI=政治的にマズい、ってんで、この呼称は理不尽にも抑圧されているようですが)。「南京そば」はあまり聞かないけど、いずれにしろ蕎麦粉なんざ使ってなくったって、形状からソバって呼ばれて何の不思議がありましょう(「焼きそば」はどうする?)。そんなに言うなら、そもそも蕎麦は植物の名称であって、チミの言ってんのはそれを原料とした食品、「蕎麦切り」のこったろう、って言ってやったっていいんだぜ、こっちは(どのみち小麦粉はたんまり混ざってんのが普通だし)。

こういう人って、例えば「朝ごはんはトーストでした」だの「昼めしはうどんにしよう」だのって言い方にも全部喧嘩売るんでしょうかね。米でなければ「ごはん」でも「めし」でもないってんで(後者はしかし本来「召し(もの)」であって、米ってわけでもなかったって話ですが)。ついでに、ソバもラーメンも間違いなく麺類ですけど、「麺」の字義は「(小)麦粉」[漢和辞典(字典?)だけでなく、角川国語辞典などは第一義として記載]、あるいは「それで作った食品」ってことで、実はパスタとほぼ同義。これも本義にこだわるなら、蕎麦もビーフン(米粉)も麺とは言わぬ、ってことになりましょう。めんどくせえ。

                  

ああ、パスタで思い出した。最近こっちがスパゲッティって言うと、「パスタのこと?」って言い返してくるバカ(毎度失礼)が多くて辟易致します。スパゲッティは間違いで本来はパスタと呼ぶのが正しい、とでも思ってんのかしら。

下拙が子供の時分、パスタと言えば(言おうにもそんな言葉すら知りませんでしたけど)スパゲッティかマカロニぐらい。もちろん、あっしのような下々の子供にとっての話ですが、いつも必ず「スパゲッティー」って言ってたような。それがまあ、日本も随分エラくなったもので、いつの間にかわざわざ日本橋の明治屋なんかに行かなくても(1972年の夏、英人の義兄にくっついて一度だけ行ったことが)、いろいろな形状の乾燥パスタが近所合壁で購えるようになりましたな。あまり購いもしませんけど。

さてこのパスタ、小麦粉を原料とする練り物のことにて、これぞまさに「麺」(英語の‘paste’、すなわち「ペースト」に対応。英語でもパスタは‘pasta’ですけどね)。スパゲッティは紛れもなきその下位区分ということに。パスタ全般をスパゲッティと称するんじゃそりゃ間違いでしょうけど、せっかくスパゲッティという細目を示しているのに、いかなる魂胆があってそれをわざわざ雑駁なパスタに言い換えようというのやら。「蕎麦でも手繰ろうかい」って言ってんのに、「そりゃ麺のことか」って返すようなもんでしょう。大が小を兼ねるのであって、その逆ではない、なんていちいち言うのもバカバカしゅうございます。

いくらなんでもスパゲッティを知らない筈はなかろうし、ひょっとすると、それは多くの日本人の間違った言い方で、その正しい名称がパスタである、って本気で思い込んでたりして。あるいは、単にスパゲッティと言うのはダサくて、何でもかんでもパスタって言うほうがイケてる、とでも?

                  

それにしちゃ、スパゲッティ以外でこんな不愉快な思いをしたことがないのはなぜでしょう。ラザニアだのラビオリだのについては特に言われませんよ(あんまり食ったこともねえけど)。マカロニ(おっと、マッケローニだっけか。1個だけだとマッケローネ?)だのペンネだのはどうなのかな。……やっぱりちゃんとわかって言っているとは思えませんな。

これは畢竟、かの大辞泉一味もまた、蕎麦だのパスタだのといった卑近な例からも明らかな、言語の持つ多義性やら多層性やらが理解できぬ愚かしき奴ばらに相違あるまい、ということになるのではないかしらと。スパゲッティをわざわざパスタと言い直させようなんて手合に至っては、ハッカーとクラッカー、ソバとラーメンの場合よりさらに愚劣で、大小の識別もままならないバカさ加減、とでも言いましょうかね。

あたしだって、「クラッカーではなくハッカーと言うべし」とか、「ラーメンじゃなくてソバだろ」などと申し上げているのではありません。(先行する)‘hacker’が間違いで(後発の)‘cracker’が正しいなどと言い張るのはいかにも空しい限りであり、現状では(30年も前から)前者が後者を包摂するものであるとともに、前者は後者の同義語としてのみ用いるのが一般義としての世界標準となっている以上、カタカナの「ハッカー」と「クラッカー」においても当然同様の認識が妥当であろう、ってだけのことなんです。

「パスタ馬鹿」の場合は、あたかも「クラッカー」は「ハッカー」と呼ぶのが本当だ、って言ってるようなもの。てことは、こりゃ大辞泉の一党とは反対方向の迷妄(より重篤)ではありませんか。しまった。

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……やっぱりくだらなかったな。まあいいか。すみません。

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