2018年3月15日木曜日

バックビートがロック?(15)

60年代中期、イギリスの不良たちの間では連日 ‘rockers’ と ‘mods’ が熾烈な抗争を繰り広げていた、ってことんなってて、前者は宛然キャロルファンの革ジャン暴走族(10年遅れだけど)、後者は、ほんとは50年代のモダンジャズ愛好家が語源だってんだけど、細身のスーツを着込んだソウル好きのオシャレな連中。レインパーカ着てスクーターに乗ってんのがお決りの図です。

その後のブリットポップ(含ロック)への寄与は圧倒的にモッズ文化のほうが多大で、英国最大にして最初の国際ポップスターたるビートルズが、デビューのちょっと前までは絵に描いたようなロックンローラーどもだったってのはちょっと笑えそうな話だったりして。しかし、実は既に廃れつつあったロックンロール的なノリを再びイギリスで、ひいてはアメリカを始め世界中で流行らせたってのが、何気なく最大の功績だった……のかも。飽くまでロック的な「うるさい」リズムの再興ってことであって、古臭い50年代ロックのままだったら、そりゃまったく売れはしなかったでしょう。強烈なビートとポップな曲調の絶妙なる融合、ってのが最大の魅力だったような……って俺が言うことでもねえか。

そんなこたどうでもよくて、そのビートルズが、初期の頃(ってことはモッズ風俗バリバリの時代)、結構最新のソウル、リズム・アンド・ブルースとともに、数年前に流行ったロックンロールの名曲をよくカバーしていたのはよく知られた話。カバー(という語の原義にはちょいと後ろ暗いところもあったりしますが)だけではなく、まだ少年だったその50年代に作ったオリジナル曲も、末期の69年に至ってアルバムに収録したりしてますが(よほど新しいノリで)、当初はむしろ時代遅れとの自己判断だったのか、ジョージ・マーティンが選んだというデビュー曲が旧作の1つだったのを例外に、以後は毎回新作ばかり。

                  

話が逸れてばかりで申しわけありません。とにかくまあ、ビートルズによるその「ロック的なノリの再興」ってのが、どうも50年代「ロックンロール」と60年代「ロック」との分水嶺を成したのではないか、などと(たった今)思っちゃったったりしまして。ビートルズがその画期をもたらした張本人だったのか、はたまたそのビートの変化自体がそもそも英国で生れたものなのかは、もとより寡聞にして存じませぬものの、とりあえず自分が知っている最古の例(とはまた大袈裟な)がビートルズだってこってす。

デビュー曲の ‘Love Me Do’ (リンク音源はリンゴ不参加のアルバム版)からしてそうなんですけど、バックビートのみならず、やはり1発めからドンと始まるところが何気なく新しかったんじゃないか、って、これまた勝手な思い込みなんでしょうが、どうしてもそう感じちゃうんですね。そのデビュー曲、CD以前はシングル盤でしか聴けなかったリンゴ参加のテイクに対し、各種LPに収録されていたのは、予備で控えていたセッションドラマーによる演奏というのは夙に知られた話かと。でも、バスドラがどうこうってより、ポールのベースが1拍めから決然たる精強さで主張を為し、それが4拍全部強勢っていう(あたしが勝手に思い込んでいる)新たなロックのノリを生むに至った要因の1つ……だったような。

以後のオリジナルもその点はどれもそんな感じなんですよね。奇数拍も偶数拍に遠慮しないのがビートルズノリってやつか?みたいな。2拍めに ‘double backbeat’ と呼ばれる8分の2つ打ちを多用するのもデビュー曲以来の常套アレンジなんだけど(GSとかの「エレキもの」はみんなそうだったかも)、それによって1拍めの印象が薄れるなんてこともないのが最大の特徴……などとも思ってんですが、それってやっぱりあたしだけなんでしょうかねえ。

                  

さて、では、当時既にナツメロであった(?)50年代のカバーはどんな感じだったのか、ってことで、まずはその名も ‘Rock and Roll Music’ ってのを、ちょいとチャック・ベリーのオリジナルと比べてみました。昨年(2017年)あの世へ越したばかりのチャック・ベリー、あたしゃ今でも ‘Johnny B. Goode’ の前奏と間奏のギターが完全には把握できず、何度聴いても曖昧なまま諦めてる箇所がいくつか残ってんですが、それでも、あれを完コピしたって言い張ってるやつらの誰一人としてこの下拙ほどには聴き込んではおらず、よっぽどいい加減に弾いてんのはとっくに承知。

てなこたぁまたどうでもよくて、このギターのイントロや間奏だけを聴く限り、歌メロと同様、やっぱり弱拍にばかり強勢が置かれてる、なんてこたありませんぞえ。あの特徴的な(ってか死ぬまでそればっかりやってた?)イントロの型は8分の連続フレーズで、とりあえず小節の頭(つまり「弱勢強拍」の表)は半音下からスライド(グリッサンド)させることによって「強調」され、その同じ強調技は2つ置き、つまり3つずつの区切りの1つめに繰返し施されるため、最初の小節で強勢が置かれるのは、1拍め表、2拍め裏、4拍め表っていう塩梅……って、これまた文章で説明しようったって無駄なのはわかってんのに、ついまたうっかりと。まあいずれにしろ、バックビートってのはやっぱり、単にスネアが鳴らされる拍ってだけのことなんじゃねえの?って気はして参りますな。

……しまった、またズレた話に流されちまった。この曲じゃなかったんだ。

                  

えー、ビートルズの「ロック・アンド・ロール・ミュージック」、64年の発表なんですが、自分がレコード買ったのは10年後の74年。でもラジオで聴いて既に知ってはおり、とにかくそっちを先に聴いちゃったもんだから、これを結構軽快なノリのポップ曲だと認識してたんです。それが、チャック・ベリーの原曲を、後発のジョニー・B・グッド(翌58年)にはだいぶ遅れて聴いたところ、ビートルズのわずか6年ばかり前の録音だってのに、随分と古臭く(失礼)、何よりノリが野暮ったい、おっと、鈍重、おっと……ってこれ、どう言っても愚弄していることになりそうですが、自分にとってはその差異は明白かつ強烈なもんで。ビートルズのはテンポも速めだけど、それはあまり重要ではなさそう。

やはり1拍めからかなりの強勢が感ぜられ、ちょいと皮肉にも思われるのですが、オリジナルより全体にハードなノリになっている分、「それがなくちゃ」と歌われる ‘backbeat’ は相対的に目立たなくなってるような雰囲気。勝手な先入観の為せる業なのかも知れませんけれど、今までわざわざ聴き比べたことがなかったので、予想を上回る違いの大きさには多少驚きましたる次第。

目立たなくなってる、ったって、決して強勢が控えめなんてこたなくて、むしろリンゴのドラムはいつもどおり相当ハード。その強烈なスネアに対してキックも何ら遠慮は見せず、とでも申しましょうか、飽くまで相対的に偶数拍の突出が抑えられている(ように聴こえる)といったところではあり、実はドラムより、やはりポールのベースが1発めから相当に強いのが決め手か、って気もしたりして。

                  

……てことで、チャック・ベリー作「ロック・アンド・ロール・ミュージック」を肴に、毎度好き勝手な御託を並べてはみました。こうした新旧ロックの比較(とっくにどっちも歴史的古さだけど)、別の事例をネタに、懲りもせずとりあえず(まだ)次回も続ける予定。

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