既に1年以上放置しておりましたが、久しぶりに投稿したくなりました。
とは言いながら、連日覗いたり書き込んだりしている SNS に上げた駄文を、そのままこちらにも再録して参ろうなどという横着の極み。相済みません。
ひとまずは、英語の綴りについてのつまらぬ愚痴などを――
本気でまともな英訳を求めるなら、訳者には二重母語話者か、少なくとも日本語に通じた英語母語話者が穏当、とは言ってやったんだけど、何せロハでやらせようなんていう姑息極まる相手ではあり(外国語がわかれば翻訳なんて誰でも簡単にできる、と思い込んでる人は結構いますが)、「え? 君はイギリスで検定試験に通ってるんでしょ」てなこと言うし、めんどくさくなって引き受けちまったのでした。若気の至りってやつかも。
当時は月収5万ほとの住込み新聞配達員で、学校も1年でやめちゃって暇はあったし、ちょいとおもしろいかも、と思ったからだったんですが、やはりすぐに後悔する仕儀とはなりまして。
すると、ひとに頼むぐらいだから自分じゃまともに英語なんか読めないそいつ(今生きてれば90歳ぐらい?)、偉そうにも赤を入れて、「1箇所スペルが違ってたよ」などと抜かしやがる。何かと思ったら、こっちが ‘apologise’ と書いたのを‘apologize’ に書き換えてやんの。
単純に、イギリスじゃ前者は普通の書き方で、アメリカでは後者しか使わない(かどうかもほんとは知らないけど、そうだとすれば、北米ということですらなく、合衆国限定ってことんなりますぜ)ってだけの話なんですが、そのバカ(と敢えて言うけど)、自分の持ってる英和辞典の見出し語の表記だけを見て、愚かにもそれを唯一のものと盲信しているのは明らか。
全体をイギリス風でやってんのはそいつにだってわかる筈で、他の「イギリス英語」には何も文句言ってないんだから、やっぱり自分の字引に載ってる書き方以外は間違い、という根本的な(かつお馴染みの)間違いたるは論を俟たず。
……と思って、ちょうどその少し前に改訂され、とりあえず買っといた研究社のでかくて高い辞書見たら、なんと、それにも ‘apologise’ という綴りは載ってないのでした。これには少なからず驚愕。
少なくともイギリスの辞書なら(てえか、アメリカのは持ってないんだった)、こうした対比を生ずる単語(当の和訳でも使った ‘organisation’ 対 ‘organization’ とか)の場合、通例として米式と共通の ‘z’ を用いた綴りを見出し語に掲げつつ、補足的に「英国式では ‘s’ もあり」と、例外なく記されてんですよね。彼の地における実際の用例とは裏腹とも思われる優先順位ですが。
その威張ったバカに類する浅はかな連中に共通するのは、まず辞書の凡例だの解説だのは読みもしないってこと。そういうのを見れば、英和辞典の見出し語は大抵の場合、米式を優先しつつも、主要語については英式も併記、みたような了見だってのはわかる筈。
その研究社のでかくてエラそうな辞書については、なんでこんなあまりにも基本的な語(中学で習う?)に対し、実際には英国(その他)ではごく普通の ‘apologise’ を無視しやがんだか、としか思われず。単なる疎漏の所産?
まず、くだくだしい解説のほんの一部に、主要語以外はアメリカ綴りのみを示す、って書いてあるだけじゃ、大半の使用者(常用するのは生徒、学生が殆ど?)はそれぞれの見出し語だけを見て、そこになかったらそういう綴りは「無い」って思い込んじゃっても不思議はなかろう、てなもんで(自分もそうだったような)。
何より、酷薄にも併記を端折りやがる非主要語の場合(主要ったって、そりゃ単に頻出するってだけのことで、どっちかてえと見慣れないものこそ辞書で引くもんじゃねえの?)、示された米式表記が、果して米英共通なのか、別に英式があるのか、判断しようがねえじゃござんせんか。
いずれにせよ、この ‘-ize’ と ‘-ise’ の対立あるいは並立については、英国(やその系統の諸国)ではほぼ例外なく成立し、既述の如く、イギリスの実情としては、辞書の基準に反して、手書きでも印刷でも、‘z’ ではなく ‘s’ を用いるのがむしろ多数派です。
自分の場合は、特定の単語は英米を問わず ‘s’ しか用いられないし(つまりアメリカの正書法はなかなか厄介)、全部 ‘s’ にしときゃひとまず無難であるのに加え、手書きでもタイプでも、‘z’ よりゃ ‘s’ のほうがどうしたって楽だから、こいつぁ遠慮なくそれで統一するに如くはなし、ってことなんですが、多くの英国人もそういう了見なんですかね。それはわかりませんが、外国人学習者向けの語法書にも、迷ったらとりあえず ‘s’ にしとけば危うからず、てなことが書いてあります。
これに限らず、いわゆるアメリカ綴りというのは19世紀以降徐々に彼の地で標準視されるようになったもので、そりゃまあ、独立以前は(今のごく一部ではあれ)あそこもイギリスの内だったわけだから、ウェブスターという碩学(または偏屈なオタク)の主張が支配的となるまでは、話し言葉はともかく、表記の違いはまずなかった、という話も聞きます。
陸続きのカナダ(発音は一緒くたに北米訛り)では、今じゃ当のイギリスでさえそうなんだから無理もないわけですが、相当にアメリカ風の書き方が普通になりつつあるのだとも。それでもやはり、基本的にはオーストラリアやニュージーランドと同様、依然として概ねイギリス式のようではあります。
たとえば、‘color’ というのが標準表記とされるのは合衆国内だけで、他の英語国では専ら ‘colour’ と書く模様。テレビでカナダの映画を観たときに気づきました。
今ではウェブで世界各地の英語の記事が見られますので、アメリカ英語が決して世界共通などではないのも容易に知れるものの、昔はそれがなかなか確かめられなかったんです。まあ今でも、日本における英文の刷り物は圧倒的に米、次いで英のものではありますけれど。
実は、(これも)以前言及したことではありますが、かつて欧文電算写植技師ってのをやってた頃、ニュージーランドのトラベラーズチェックの文字入力って仕事をやったことがありまして(なんで日本の末端企業が依頼されたのかは不明)、その綴りが ‘traveller's check’ だったのを見て、へえ、そうなんだ、と思ったことがございまして。
これ、アメリカならまず例外なく ‘traveler's check’ と、‘l’ が1つ少ないんですが、これもまたカナダでさえ2つが普通。一方、小切手の意のチェックは、イギリスでは(今のところ?) ‘cheque’ で、つまり件のニュージーランドのやつは、英米の折衷案のような書きようではあった、ってことなんです。
どうやらそれも、よっぽどアメリカに近いカナダでは、依然英国式の ‘cheque’ らしいんですが、豪州、ニュージーランドと同様、やはりカナダの表記は英米のものに比べると目にする機会が少ないので、必ずしも判然とはせず。
あるいはそのニュージーランドのやつも、たまたまその事例が半ばアメリカ風だったというだけで、全般的な基準ではどうなのかわかりませんし。
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