2021年8月16日月曜日

相も変らぬ無益な所感(3)

【また SNS から流用】

翻訳仕事でだいぶ前に気づいちゃったんですが、「同調圧力」と訳される ‘peer pressure’(てえか、前者が後者の訳語?)って、どうも意味が微妙に、あるいは明らかに違うんですよね。

‘peer’ ってのは、英国では5つの爵位に該当するいわゆる貴族のことでもあるけれど、百姓町人たるこちとらにとっては、要するに年齢だの社会的階層だのといった区分で同等とされる者(括れば当然 ‘peers’ てえことに)の意。つまり、おんなじような部類のやつ(連中)が ‘peer(s)’ という次第で、「査読」と訳される ‘peer review’ は、同業者による校閲みたようなもんだし、‘peerless’ てえと、要するに「匹敵する者とてなき」てな意味。


さて、その「同調圧力」の一般的な定義としては、「当該の集団における少数派に対し、多数派に同調するよう暗に強制する圧力(ってより強制すること?)」みたようなもんだと思うんですが、対応する英語(あるいはそもそもの語源)では、外部からの(表面的には隠然たる)強制というよりは、自らそう受け取って萎縮するに至る感覚、とでもいったところではあるんですよね。世間という他者の意向ではなく、それに対する自らの反応、とでも申しましょうか。

まあ似たようなもんか、とも言えようし、実際この ‘peer pressure’ ってのが出てきたら否応なく「同調圧力」としとくしかないのは、とにかく ‘identity’ って言ってたら、ほんとは同じかどうかなんて話とは全然関係なくても、とりあえず「同一性」にしとかないと厄介、ってのと同工。まあ「同調圧力」ならそれよりゃよっぽど意味は通じますし。


かと思えば、‘and/or’ って常套句を、和文としてより読み易くしといてやろうと思って、「~と~、またはその一方」とか「~と~のいずれか、または両方」と訳したら、「作法」どおり「および/または」にしろって赤字を入れられちゃったことも。ハナからそうしときゃいいならこっちだってよっぽど楽なんだけど、だってそれ、国語文としておかしいでしょ、とは思わないんですね、皆さん(って誰なんだか)。


まあいいか。つまるところこの言いがかり、何かにつけ日本ではことの是非、理非曲直ではなく、飽くまで世間という、実際はどこにそんなやつがいるんだか、っていう集団的幻想に多く(すべて?)が支配されており、法も科学もその敵ではない、ってことが言いたかったんですよね(たぶん)。

親が子を叱るときも、まあしばしば宗教絡みの保守思想に過ぎないとしても、飽くまで人として正しいか否か、ってことを言いたがるのが西洋的だとすると、日本の因襲では、論理的な善悪は二の次で、とにかく世間並みだの世間様だのってのが絶対的基準、という気は致します。

でもほんとにみんなそれに従ってたら、何十年、何百年を経ても世の中変りようがなく、実際には常に一定数の変革者に事欠かないからこそ何とかここまで持続し得た、とも申せましょう。


やっぱりどうでもよすぎる話ではありました。もうしかたありません。

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