ちょうど40年前の1978年、ロンドンの英語学校とは通りを挟んだ向いにあった本屋で偶然見つけ、迷わず買った ‘The Beatles’ っていう本がまた読みたくなり、部屋中を探してやっと見つけました。
そのさらに10年前の初版を改訂したというペーパーバックで、既にボロボロ、ページも相当に黄ばんでおりますが、それでも活字の使いようは今どきよりよほど正統的。たとえば ‘ff’ ‘fi’ ‘fl’ ‘ffi’ ‘ffl’ など、今じゃあウェブ上の表示と同様、全部1字ずつ並べるだけの本が普通になっててガッカリすることが多い中、全部 ‘ligature’、「合字」ってやつんなってんです。つまり2字あるいは3字が合わさって1つの活字になってるって寸法。
何のことかわかんないとしても、それは本場の欧米でも同じこと。堅気の衆なら日本人と変らんでしょうし、いったいそれに何の意味があるんだ、と思われるのもごく正常な反応ではあります。でもね、たとえば ‘f’ という活字と ‘i’ という別の活字を並べると、前者の右上に垂れ下がった丸い点(や横棒)と、後者のそれ(中学の英語教師は「アイ上の点を忘れるな」などと言ってやがったな)も当然並ぶことになり、しかも極めて近接、というよりくっついちゃったりして、甚だ見苦しい……なんて思うところからして一種の職業病の如きものなんでしょうけれど、作法どおりその合字を使うと、点は両方を兼ねた1つだけとなり、実にスッキリするってわけです。